散歩道<4129> 
         
                           経済気象台(637)・庶民目線の景気動向

 我が国の高度成長期、駅前の商店街がにぎわい。住宅の着工件数は右肩上がりで、自動車販売台数も好調。商店、町工場の新規開業も相次いだ。税収の伸びが期待でき、政府は毎年、予算規模を拡大させた。だが、バブルが崩壊しても予算は膨らんだ。今度は不況対策の名目で、政府は借金をして公共事業にお金をつぎ込んだ。米国では2000年に頂点に達したITバブル*1が崩壊すると、住宅バブルが発生した。低所得でも銀行ローンを活用して郊外に立派な住宅を手に入れた。住宅はすぐに値上がりし、資金を提供した金融機関も債権保全に不安はない。その貸付残高は150兆円〜300兆円とも言われる規模となった。金融システム破綻(はたん)の原因となったサブプライムローンの実体だ。
 日米両政府は今、不況脱却に金融緩和と、消費刺激に懸命だ。
 だが、日本国民は国債という借金は結局、自分たちにツケが回ってくると、無意識のうちに正しく理解している。だから、いくら金融を緩和しても倹約に努めてしまう。米国の賢明な低所得者は、大きな借金をしてまで住宅を買おうとは思わないし、できない。かっての米国の好況も庶民の借金による「架空需要」だったのではないか。デフレ脱却は必要だが、今の経済構造を考えればインフレ誘導は無理な話だ。弱々しい需要に比べて一部天然資源以外は常に生産過剰というのが現実だ。
 日米両国は、今までとは異なる新しい社会構造への転換点に立っているようだ。通常の金融政策が役に立たない新しい成熟社会だ。両国政府はいかなる方策で不況脱出をはかるのか。法人税率の5%軽微などと言った小細工では何の変化も起きないだろう。

'10.12..31.朝日新聞 

関連記事:散歩道<検>経済気象台、<検>社説、<検>言葉・*1バブル