散歩道<4115>
                           クルーグマン・コラム・アイルランドの苦境(1)                   (1)〜(4)続く
                                銀行の食い物にされる人々
 
 いま私たちに必要なのは、もう一人のスイフトではないか。
 ジョナサン・スイフトは「ガリバー旅行記」の著者として知られている。だが、最近起きた数々の出来事はスイフトが1927年に描いたエッセー「穏健なる提案」を私に思い起こさせる。このエッセーで、彼は当時のアイルランドの人々の悲惨な困窮振りを観察し、その解決策として子供たちを食料として売れと提案した。「この食料は多少魅力的なものだろう」と彼は主張した。「地主にふさわしい食料だろう。彼らはこどもたちの両親をさんざんむさぼったのだから、子供たちも所有権者として最もふさわしい連中だと思われる」
 そう、今日、それは地主ではなく銀行家たちだ。銀行家の連中は民衆を貧しくさせているだけで民衆を食べているわけではない。いま アイルランドで起こっていることに正義の鉄槌
(てっつい)を下せるのは、諷刺作家、それも非常に舌鋒(ぜっぽう)の鋭い人だけだろう。
  アイルランドの物語は紛れもなく経済的な奇跡からはじまった。だが、この奇跡は結局、常軌を逸した銀行や不動産開発業者による投機的な狂乱に支えられていたのだ。こうした銀行や不動産開発業者はみな、主立った政治家連中とつるんでいたのだ。この狂乱の資金はアイルランドの銀行の巨額の借り入れで賄われ、その多くは他の欧州諸国の銀行が貸し出したものだった。
 そしてバブルがはじけ、銀行は巨額の損失に直面することになった。みなさんは銀行に金を貸していた人々が損害を分担すべきだと思ったかも知れない。何と言っても、彼らは法律上の責任を負う成人であって、自分が取ったリスクを理解できなかったのであれば、それは他ならぬ彼ら自身の責任であるからだ。 

'10.12.9.朝日新聞・米プリンストン大教授・*1クルーグマン氏

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備考、散歩道<4119>に、私の、日本の苦境と現状と考えを書いています。