散歩道<4094>
ザ・コラム・@が生む悲喜劇(4) (1)〜(4)続く
居どころ感覚、落とし穴に
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ところが4泊5日の密会の間、何が忙しいのか、知事はメールの着信を一度も確かめなかった。秘書官が心配して15回も携帯電話を鳴らしたが、電源はオフのまま。さすがに5日の音信不通は長く、警護官や副知事たちが騒ぎ出す。
「知事が不明」「登山中に遭難か」と大々的に報じられ、無断渡航が発覚した。弾劾(だんがい)調査では「居どころを偽るとは知事失格」と追及された。以前の南米出張時の領収書といっしょにメールを計4千n分も調べられたのは、手紙と違って送受信の痕跡が消し難いからだ。
弾劾こそ免れたものの、20年連れ添った婦人からは愛想をつかされた。夫人は「夫に釈明の余地はない」という声明をこれまたメールで報道機関に送ると、4子を連れて知事公舎を出た。離婚成立はその半年後。「夫が書いたイヤらしいメールを新聞で見て切れた。とても子どもたちには見せられない内容でした」と語った。
電子住所40年。サンフォード知事ほどではないにせよ、@の落とし穴にはまった人々の悲喜劇をしばしば聞く。出張先で妙に気が大きくなる私など、居どころ感覚に狂いはないか、とき時々胸に手を当てて点検している。
'11.1.19.朝日新聞・ニューヨーク支局長・山中 秀広氏
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