散歩道<4057>
経済気象台(628)・権力の二重構造を撃つ
企業における最大の危機は、トップの権力構造が二重になったときである。それは多くの場合、実力もある経営者が、何らかのスキャンダルで不本意なながら引退を迫られた時におきる。本人は引退したくないわけだから、後任を自ら指名することを引退の条件にする。実力者に面と向って反対は出来ないから、後継者は傀儡(かいらい)となる。
問題はその傀儡である。最初は単なるレコーダーの役割に甘んじているが、そこは人間である。いつまでも、オウムのような役回りに甘んじていられなくなる。はかりごとをめぐらす側近なども現れ、本人にその気はなくても自立の体制が出来上がる。実力者も年だ,そう長くはあるまい、というわけだ。
こうなってくると社内の指揮決定のあり方は混沌(こんとん)としてくる。怪情報が飛び交い、それに追われ仕事どころではなくなる。こんな会社がうまく行くはずもないので、紆余曲折(うよきょくせつ)、哀れな結末となる。
そのような事態を解決する方法は一つしかない。社外の力を借りることだ。社外取締役、顧問など方法はいくらでもあろう。問題は閉じられた会社の殻を破って今までにない新しい発想を論議する場を設けることだ。そうすれば、人々は今までのしがらみを離れて議論し、行動する自由と活力を獲得する。
政治の世界も同じことだ権力の二重構造が存在する時、政治は混迷し、不毛な内部の論争に時が費やされる。それを避ける道はただ一つ、新しいテーゼをつくり、その旗印をもとに新しい集団を作ることだ。新しい活力は、新しい結合から生まれる。イノベ−ションの語る新結合は、なにも技術に限ったことではないのである。
'10.11.16.朝日新聞
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