散歩道<4048>

                        ザ・コラム・TPPと農業(4)                      (1)〜(4)続く
                          内需拡大こそ競争力強める

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 全面的自由貿易につながる地域間協定は、経済全体から見れば望ましいが、衰退する産業を放置することはできない。これは農業問題に端的に表れている。一口に農業と言っても多様であり、比較優位を持つ分野でもあろう。又、自立するために大規模化が有効なら、それを阻む規制はできるかぎり撤廃すべきである。しかし、それだけでは問題は解決しない。
 もっとも影響を受けると思われる稲作を例に取ろう。米価が国際価格になれば、多くは生産を維持できない。生産停止に追い込まれた水田が、すべて大規模経営の他の用途で使われるならよいが、全国に広がる水田のかなりが放置されよう。そうなれば日本の国土が荒れる。つまり、農業とは国土や環境の保全事業でもある。また、稲作は高齢者問題でもある。お年寄りの農作業を辞めさせて家に閉じ込めるのではなく、元気に働いて田園を守ってもらいたい。
 しかし、保護の代償に生産調整を行えば、国際競争に挑もうとする生産者の意欲をそぐ。この矛盾は、農業が産業としての側面と、国土保全や高齢者対策などの側面の両方を持つからである。政策立案では、この二つを明確に分ける必要がある。
 ではどうすべきか。現状の高関税での米価維持では、国際価格との差額分はコメを買う際の物品税と同じである。これを一般の税に置き換え、徐々に生産補助金に移行することも考えられよう。その際、補助の上限生産量を過去の実績などに応じて決める。これなら国際価格の下で自立を目指し生産を増やす生産者には、定額の所得補償と同じになる。高齢者も稲作を続けられる。農業の自立と、環境保全や高齢者支援が両立する。米価下落で需要増も期待できる。


'10.11.24。朝日新聞・大阪大フェロー・小野 善康氏

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