散歩道<4047>

                        ザ・コラム・TPPと農業(3)                      (1)〜(4)続く
                          内需拡大こそ競争力強める 

○ ○ 
 
 このとき国内の需要が旺盛で、輸出増加に応じて輸入も増えるならば、経常収支黒字は広がらず円高も進まない.そのため比較優位の程度が異なる多くの産業がある場合、国民の輸入意欲が高ければ、生き残る産業が増える。つまり、企業の競争力は為替レート調整を通して内需にも依存しているのだ。
 ところが地域間協定では、こうしたマクロの調整は考慮されず、個別産業の関税のみが注目される。だから、自動車などの輸出産業と、農業などの輸入保護産業での対立が表面化する。
 しかし、農業がなかったとしても、相手国が日本の特定産業にかけていた輸入関税を撤廃すれば、その輸出が伸びて円高が進み、それまで生き延びていた分野のいくつかが衰退する。逆に、すべての輸出財に同率の関税がかけられても、比較優位は代わらず、その分円安になってどの産業も影響を受けない。
 結局、個別産業の利害だけを考えると、経済全体の問題を見誤る。すべての産業の競争力を上げるには、生産効率の引き上げではなく、輸出で稼いだ外貨を使うことを考え、内需を拡大して円安を生むしかない。

'10.11.24。朝日新聞・大阪大フェロー・小野 善康氏

関連記事:散歩道<検>政治、<検>農業、