散歩道<4041>
ザ・コラム・遠野物語(2) (1)〜(4)続く
百年の知恵 町おこしに
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遠野を囲む山々は、燃え立つ赤や黄に色づいていた。
柳田は100年前、地元出身の佐々木喜善(きぜん)から聞いた話を筆記し、350部を自費出版した。天狗やザシキワラシ、カッパが登場する怪奇な世界。ただ童話と違うのは、大半が数年前に起きた出来事で、体験者の多くが実在した点だ。「実名でてくる人々の殆どは、今も子孫が特定できる」と、高柳俊郎遠野・物語研究所長はいう。
物語のたたずまいから、さぞや険しい山中と想像していたら、違った。遠野の8割は山地だが、盆地の城下町は、かって沿岸と内陸を結ぶ交易センターだった。
「街道に市が立つ日は、馬千匹人千人が行き交うにぎわいだった。そう父から聞きました」
創業140年の菓子店を営む松田和子さんが言う。だが、かって豪商の町家がならんでいた街道も、今は郊外の量販店に客が流れ、さびれて久しい。
「人がいない。客が来ない。でも、ないものねだりは、何にもならない。そう思い,町おこしをするようになりました」
もっと多く、もっと便利に。そう望む生きかたを変え、今ある暮らしの豊かさを味わうようになった。ゆっくり月をめでる観月会。着物を楽しむ会。今は「遠野物語」を客に語る「おかみさんの会」を主宰している。
佐渡島とほぼ同じ広さに、3万300人。人口は5年前に比べ、2千人以上も減った。90の行政区のうち、3分の2は55歳以上が過半数を占める。
「10年後のは高齢化が深刻になる。観光に力を入れ、定住に結びつける。遠野物語という財産をいかした町おこしをしたい」と、市ふるさと定住推進室の鈴木惣喜室長は話した。
遠野でなければできないこころみだろうか。長年「遠野物語」を核とした地域おこしに取り組む小井口有さんはいう。
「どの地方にも町史があり、村史がある。貧しくても、心豊かな暮らしをしてきた祖先の知恵を学び、今から、それぞれの物語を編めばいいのです」
'10.11.17.朝日新聞・編集委員・*1外岡秀俊氏
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