散歩道<4015>
オピニオン・日本@世界
日米同盟と憲法は外交資産・・・・・・・民生大国たれ(5) (1)〜(6)続く
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民主党政権の外交・安全保障への取り組みに対する国民の目は厳しい。対米、対中、対ロ外交のすべてで、消化不足、準備不足、根回し不足が目立った。
しかし、国民が問うているのは、単に不慣れとか官僚の使い方が下手といった次元の話ではないだろう。国民は、民主党政権の下で、この国はちゃんと守られているのか、国民の生命と財産はしっかりと守られているのか、を問うているのである。検察庁、警察、海上保安庁は、職責を十分に果たしていないのではないか。思い込み逮捕、人権意識の希薄さ、組織のエゴと保身、情報管理のずさんさ・・・。国家の根幹の「夜警」機能それ自体に対する不信感が高まっている。何を守るか、そのために何をするか。日本の領土、領海を手堅く守る。日米同盟の抑止力と安定力を維持する、朝鮮半島の統一ピジョンを日米韓、そいて中国と共有する。アジア太平洋にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)をはじめFTA(自由貿易協定)を広げ、多角的な「海の平和」を創る。「自由で開かれた国際秩序」を構築していく。
問題は、どう守るか、という守り方にある。たとえば、FTAやEPA(経済連携協定)に反対することが、日本の農業をもっともよく守ることにはならない。守るために変えなければならないこともある。
外交・安保で言えば、守るべきものは、日本が戦後、手にした外交・安保資産である。すなわち日米同盟と憲法であり、軍事力によらない「世界民生大国」としての役割である。それによってもたらされた日本に対する世界の信頼感と敬意である。80年代以降の中国の近代化と「平和台頭」路線も、アジアの平和と安定も、日本と日米のこのような貢献によって可能となった。
それらの資産は、時代に適合させつつ、これからも日本の外交・安保資産として使うことができる。
オバマ政権は開発を外交、防衛と並ぶ「三つのD」の一つに据え、軍事大国と「民生大国」(シビリアンパワー)の組み合わせによるスマートパワーを宣言している。日本の「世界民生大国」としての役割とも共鳴し始めた。それは、紛争予防、平和構築、人道支援、地球環境など「日米同盟のフロンティア」を広げる上で役に立つはずである。
「世界民生大国」を追求してきたあの時代、日本は聞き上手で、謙虚だった。他から貪欲に学び、時にガイアツも利用し、改革と開放を進めた。国家の誇りは胸に秘め、それをことさら言い立てることは慎んだ。
'10.12.1.朝日新聞・本社主筆・*1船橋洋一氏