散歩道<4004>

                       クルーグマンコラム・中間選挙の大敗(2)                     (1)〜(4)続く 
                          大統領の持つ力、生かせるか                                  

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 分断を乗越えるという彼の約束は疑問が残るものとはいえ、選挙戦における政治手法としては良いものだったのかも知れない。つまり、2008年9月の初め、大統領選がいかに接戦だったか、(共和党の副大統領候補だった)サラ・ペリン氏の登場やリーマン・ブラザーズの破綻で窮地を脱するまで民主党員たちがどれほど心配したのか、人々は忘れてしまった。しかし本当の問題は、1990年代(の好況)を覚えている人々なら襲来していると知っていた、偏った党派による大火事の嵐の中にオバマ氏が踏み込んだ時、それまでの主張の調子を変えることが出来たかどうか、だった。彼は調子を一層強めることは出来た。だが、戦うことは出来ただろうか?これまでのところ、その答えはノーだ。
 まさしく政権の発足直後にオバマ氏がやらなかったらいけなかったことは、何にもまして金融・経済危機の規模に見合うだけの経済対策の実現に向けて戦うことであった。だが実際は、彼は議会と交渉しようというよりも先に自分自身と交渉してしまった。そして、明らかにひどく不適切な対策を提案し、経済対策は抗議を招くまでもないほどに規模の小さなものになることを許してしまった。そして何にも増して、この経済状況に力強く行動できなかったことが、中間選挙での歴史的な大敗北につながったのだ。
 米国経済が大変な状況だったとしても、その政治的な被害を食い止めようとする政権の努力は驚くほど弱いものだった。人々の心をとらえるようなスローガンも、基本方針についての明確な声明もなかった。次々と変わり続けるキャンペーンのテーマにどれほどの人が気付いていただろうか。経済危機という大惨事がせまりつつある中、広められた「回復の夏」という言葉を覚えている人はいるだろうか。

'10.11.18.朝日新聞
クルーグマン・コラムPaul Krugman氏