散歩道<3992>

                         経済気象台(623)・G20の勝者は米国                    

 20ヶ国・地域G20、財務相・中央銀行総裁会議が終わった。共同声明には、通貨切り下げ競争の回避、経済実勢を反映した為替レートの実現、対外不均衡の相互評価などが盛り込まれた。一方、米国が提案した経常収支の数値目標や、人民元の切り上げなど、具体的成果はなかった。
 このため、通貨安競争や保護的措置に歯止めをかけることはできないだろうという辛口の評価が、現時点では多いようだ。しかし、人民元切り上げの舞台を整えたという点において、今回のG20は大きな前進だったと、筆者は考える。
 ポイントは、米国が「強いドルを支持する」と表明したところにある。それによって米国は「通貨安競争にくみしない」という立場を明らかにし、日本などの市場介入を牽制するとともに、「ボールは、人民元を人為的に切り下げている中国にある」というメッセージを送った。中国は、人民元を切り上げなければ通貨安競争を招き、対外不均衡是正を遅らせている責任を負わされる立場に追い込まれたといえる。つまりG20は。中国包囲網を作るための舞台装置として機能した。
 そう考えると、今回のG20の勝者は米国だったといえる。しかも「強いドル」声明は、単なるレトリックではなく、景気に好影響を及ぼすレベルまで、ドルが十分に下落したことを確認した上での戦術転換である。やはり、米国はしたたかだった。一方で米国は、大幅な金融緩和によって新興国のバブルを引き起こしていると批判されている。米国が早く経済を立て直して、政策を正常化することができなければ、今度は米国が非難の矢面に立つことになる。世界の経済・金融・通貨戦争は終わっていない。

'10.10.28.朝日新聞

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