散歩道<3979>

                       横浜APECを前に・「開国」を問う, 《5》               
                            TPPの芽育てたい(2)                    (1)〜(2)続く

・・・・競争条件が平等になれば、日本の雇用は守れるといいうことなのですか。
 「海外に一度移した工場をもう一回、日本に戻すことは難しい。海外移転は不可逆的だ。だが、競争条件を整えるという政府のシナリオの実現性を経営者が確信することができれば、新たな海外移転には相当なブレーキがかかろう」
 「新日鉄はかって8万人いた従業員を1万8千人に減らし、高炉も釜石(岩手県)や堺(大阪府)などを止めたメーカーです。雇用を減らす苦しみは分かっている。もちろん株主は大事だが、雇用機会を提供し、地域社会を大切にするのは、企業の使命だ。海外に出て行くのが合理的であっても、日本の経営者には心の抑制が働いている。できれば生産基地を日本に残したいという気持ちなのだ」
・・・例外なき関税撤廃を目指すTPPは非常にハードルの高い協定です。かけ声倒れに終わる懸念もあります。
 「我々にとってTPPはひとつの希望です。希望にすぎないかも知れない。でも、せっかく出た芽なのだから、大事に育てたい」
・・・農業団体は「農業を犠牲にするのか」と反発を強めています。
 「TPPをとるのか、農業をとるのかという二者択一的な発想はやめよう。日本に農業がなくてもいいなどと思っている人はいないのだから。ただ、これだけ消費者保護が言われている世の中なのに、農業となると、消費者の視点がまったく出てこないのは不思議だ。関税を下げ、安い農産物を買えるメリットが消費者に見えれば、ある程度国民負担が増えるのも理解を得られると思う。農業改革はこれまで何度も途中でつぶされてきた。強い農業をつくるにはどうしたらいいのか、原点に返って、あるべき政策を考え直すときだ」

'10.11.10.朝日新聞・新日鉄会長・三村 明夫氏

関連記事:散歩道<検>政治、<検>外国、<検>社説、