散歩道<3961>
日本@世界・「通商国家」の原点に返れ(2) (1)〜(4)続く
「自由で開かれた国際秩序」を築け 日本もTPPに積極参加を
アジアの人々は、放っておいてもこの地域は成長する、と思い込んでいるように見える。ここでは、アニマル・スピリッツ(飢餓感)が満ち溢れている。半世紀前、ドゴール仏大統領は池田勇人首相を「トランジスターセールスマン」と呼んだが、今では、家電、パソコン、自動車、原発、コールセンター・・・。どのアジアの国もみな、世界のセールスマンである。
しかし、この地域の経済統合には三つの挑戦が横たわっている。
一つは、中国の国家資本主義の行方である。中国が、レアアースの不透明な輸出規制のような自由貿易ルールに抵触する産業政策と巨大な国内市場をテコにアジアを従える垂直的統合への志向を強めるようであれば、近隣諸国との摩擦は避けられない。大切なことは、「法の支配」に基づく「自由で開かれた国際秩序」を中国も含めともに守り、育てることである。それが地域と世界の持続的な平和と安定に欠かせない。
第二に、格差の広がりである。ここでは市場の自由化とともに経済社会の開発を進める必要がある。APECは設立当初は自由化と開発協力を二本柱に据えた。しかし、その後、米国に押され、自由化一辺倒になった。幸い、オバマ政権は、破綻(はたん)国家とテロの脅威を予防するため、外交、防衛と並んで開発を重視している。なかでも人材開発のための経済・技術協力は、格差是正に欠かせない。ここは日米提携して、開発協力をAPECのど真中のテーマとするべきである。
最後は、アジア太平洋の大国の間の国際秩序に関するビジョンの共有と政策協議が十分にできていないことである。とくに日本と中国の成熟した関係がいつまでも育たない。
EU(欧州連合)の場合、石炭鉄鋼共同体をはじめとする欧州統合の歴史は「経済の衣をまとってはいたが、フランスとドイツの敵対的関係を克服するための政治的な仕掛けだった」と歴史家のトニー・ジャットは「欧州戦後史」で記している。
'10.11.3.朝日新聞・本社主筆・*1船橋洋一氏
関連記事:散歩道<検>氏名・*1船橋洋一氏.2919.3322、<検>時間・*2失われた10年、<検>言葉・*3格差、<検>外国、<検>農業、
![]()