散歩道<3959>
オピニオン・論壇時評・あすを探る(3) (1)〜(3)続く
多様性は人間だけのものか
昆虫少年だった私が憧(あこが)れたのはファーブルではなくむしろドリトル先生の物語だった。ドリトル先生は動物がそれぞれ言葉を持っていることに気づき、彼等と会話できるようになる。しかしドリトル先生は、それを利用して何かをなそうとはしない。ただ、生き物たちが語る物語に耳を傾けることが彼の研究だった。そんなドリトル先生は自らのことを「ナチュラリスト」と呼んでいた。ドリトル先生はブタを可愛がりつつも、好物はスペアリブとソーセージ。つまりドリトル先生は「生きる」ということの意味をきちんと知り、その節度を守った。
ひるがえって今、私たちは、最後の瞬間にやってきた新参者であるにもかかわらず、進化の歴史が膨大な時間をかけて作り上げたこの多様性を独り占めしようとしている。この企ては何をもたらすのだろうか。
示準化石というものがある。それが見つかることによって地層の地質年代*4を言い当てることができる化石のことである。三葉虫は古生代(約5億年〜2.5億年前)の、アンモナイトは中生代(約2.5億〜0.6億年前)の示準化石である。示準化石には条件がある。現生しない生物の化石であること。分布領域が広く多数発見できること。短期間のみ栄えた生物であること。急速に専有を目指した種は、それゆえにこそ急速に滅びに向かう。何億年か先、人類が示準化石となることは間違いない。
'10.10.28.朝日新聞・青山学院大・教授・*1福岡 伸一氏
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