散歩道<3958>
オピニオン・論壇時評・あすを探る(2) (1)〜(3)続く
多様性は人間だけのものか
ニッチという言葉がある。これはもともと生物学用語で”くぼみ”を意味し、ある種が生態系の中で分担している持ち場のことをさす。生物はニッチ間で、絶えず物質・エネルギー・情報のパスを繰り返している。それはある時は食う・食われるの緊張関係であり、また別の時は呼気中の二酸化炭素を炭水化物に還元し、排出(はいせつ)物を浄化してくれる相互依存関係でもある。つまりすべての生物は地球の循環のダイナミクス、すなわち動的平衡を支えるプレーヤーといえる。蚊やゴキブリのような「害虫」であっても、プレーヤーが急に消滅することは、平衡を脆弱にし、乱すことに直結する。
だから生物多様性を保持することはそれを撹乱(かくらん)した人間の当然の責務である。しかし今、問題は、生物多様性を資源ととらえそれを囲い込もうとする側と、自由なアクセスを制限されたくない側との対立にすりかわっている。そもそも生物多様性とは人間の専有物だろうか。
まったく否である。生命38億年*3の歴史において人間が現れはじめたのは多めに見積もっても、たかだかここ数百万年のこと。多様性はすでに作り出されたものとしてあり、彼らの蓄積の上に私たちの存在が成り立った。
'10.10.28.朝日新聞・青山学院大・教授・*1福岡 伸一氏
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