散歩道<3947>

                          オピニオン・耕論・「泥水」の経験が本質教える(2)                (1)〜(2)続く

 学んだのは、一番正しいのはお客さんということです。お客さんの期待に応え、来店の頻度を上げるには、質は落せません。そこが、一番強いよりどころになるのです。
 その姿勢は、2003年暮れから牛海綿状脳症で米国産牛肉の輸入が禁止された時も貫きました。他社が米国産以外で牛丼を販売しても、2年半、我慢しました。加盟店の突き上げもありましたが、輸入再開後を考えた。ブランド力に重きを置けば、何でもいいからと牛丼は出せない。新メニューで乗り切りました。
 日本は今、先の見えない不況の中にいます。今後は人口が減り、経済規模も縮小するでしょう。この業界も明らかな供給過剰状態にあります。
 今年は2回、今までで一番きついとおもうほどのストレスをかんじました。一つは、4月からグループを統括するホールディングス社長と吉野家の社長を兼ねて、現場復帰するかどうかを迷った時。3年前に持ち株式会社化して次世代へ継承を考えたので、やりたくない人事でした。もう一つは、前年割れが止まらず、内外で吉野家への不安が募っていると感じたときです。
 4月からの入念な準備が実って9月から販売した牛鍋丼が好調です。豆腐と、しらたきも入れた牛丼の元祖といえる商品で、質も確保しながら280円の価格を実現。1千万食を超え、8月まで18ヶ月続いた前年割れもストップ、9月は前年を上回りました。
 本当は、私はこの記事に出る資格はないのです。今の逆境をまだ克服していないですから。ただ、過去に試練を乗越えたことが、耐える精神力や体力、刹那的ではなく未来を見通す力をつけてくれました。この時代は、吉野家が次の環境に適応し、モデルチェンジする機会だと思っています。

'10.10.26.朝日新聞・吉野家ホールディングス社長・安部 修二さん

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