散歩道<3945>
オピニオン・耕論・逆境をゆく(2) (1)〜(2)続く
人生なんてご飯と一緒
私には現役時代から「語録」がある。「熱いものが苦手なんです。猫背なもんで」と猫舌と言い間違えたり、すし店で辛子メンタイコを頼むとして「幸子(さちこ)メンタイコ」といっちゃったり。大まじめに言っているのが逆に受けるんだろう。
そんな私をみて一般の人たちが「あっ、輪島は今がんばっているんだな」という感覚でみてくれるとうれしいんだよ。逆に辛かったのは、時折、面と向って「輪島さん、いま何やってるの」と言われること。「どんな仕事をしているんですか」とか聞けばいいのに、バカにされているような気になるじゃない。
「ヒマで風来坊やっています」とか。冗談めかして応えているけど、本当は「色んな仕事やって、ちゃんと稼いで税金払って、まっとうに暮らしている。そういうあなた自身は、一体給料いくらもらっているんだ」って言い返したかったよ。
一番「やった」と思ったのは、」2009年の大相撲初場所で、NHKのテレビ中継解説をやったことだね。「オレはやっとふるさとに帰ってきたな」と、感動した。色々なことやったけど、私にとってはやっぱり相撲が「仕事のふるさと」なんだ。
「逆境」という言葉は好きじゃない。みんなこういう時代に踏ん張って生きているんだから、「自分だけが苦しい。逆境だ」なんて思わずに、自分を信じて仕事をすればいいんだよ。人生なんてご飯と一緒。おいしい時もまずい時もあるんだからさ。
あと、大事なのがセンスだな。服装もきちんとしてね。それがあるから「輪島かっこいいな」とみんな注目するわけだ。きょうは写真撮るとは思っていなかったから普段着だけど。ごめんね、こんな格好で。
'10.10.26.朝日新聞・第54代横綱・輪島 大士氏
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