散歩道<3935>
オピニオン・インドは甘くない(2) (1)〜(2)続く
政経の戦略ないと空振りも
日本が主要国と結ぶ自由化はインドが初めて、と一般に評価されている。だが、日印間の貿易額は日中、印中ほど大きくはないし、インドは日本の農産物市場への関心が薄く、コメを対象外とする点で利害が一致しやすい。やりやすい相手との間でとりあえず自由化を、ということだったのではないか。では、他の国々との自由化はどうするのか。菅政権に主体的な経済外交戦略があるのだろうか。
インドと自由化を進めること自体は悪くないが、すぐには輸出拡大を期待できない。
インドは中国に比べても貧困層が多い。中間層が増えたとはいえ、価格志向が強い。日本製品は高コストで、インドの所得水準からすれば「過剰品質」でもある。膨大な市場のどの階層を狙うのか、販売戦略を明確にし、生産の現地化でコストを抑えることが必要だ。スズキやホンダは成功したが、市場の読みを誤った企業は撤退した。
韓国企業などとの競争は厳しいが、長期的に中間層のいっそうの拡大が期待できる。現地化戦略で日本ブランドを育てれば、高付加価値の輸出製品も売れるようになる。
もっとも、自由化以上に大事なのは企業のイノベーション(技術革新)だ。日本企業はサラリーマン社長が増え、当面の利益を増やすために法人税を下げろ、関税を下げろというが、イノベーションの力が落ちていることが一番の問題だ。IT分野でも長期的に人材を育てず使い捨てにしてきたことが響いている。
その点、米国企業はインド人の優秀なIT頭脳をどんどん活用しているが,日本企業が使いこなすのは大変だ。ソフト開発ひとつでも組織力で時間をかける日本人とは違い。インド人はスピード重視に特徴がある。自己主張も強いので、「すみません文化」で譲り合う日本人の能力では管理が難しいだろう。
'10.10.8.朝日新聞・慶応大教授・*1金子 勝さん
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