散歩道<3923>

                         オピニオン・耕論外交と世論(1)                     (1)〜(4) 続く      
                        民主的外交公開し説明を           (ネットの過激化 ・ 要員拡充が必要)

 尖閣諸島沖の漁船衝突事件がなぜ、これだけ大きな問題になったのか。私は、日中の領土争いという表層の現象の背後に潜む大きな構造的変化にも留意すべきだと考えている。
 ここで言う構造的変化とは二つある。一つは東アジアにおけるパワーバランスの変化。具体的には日本の国力低下と中国の急速な台頭だ。
 外交史を振り返れば、国際的な力のバランスが急激に変化する時に領土問題が浮上するケースが多い。国力が低下する国では、失われていく威信を取り戻そうと愛国心がわきあがり、対外的に過剰なまでの強硬姿勢をとりがちになる。一方、国力が増す国では、国民がふさわしい地位を求め、領土要求に至る場合もある。東アジアの現状をみると、日本が前者、中国が後者であるのは論をまたない。
 構造的変化の二つ目は国際社会のルールの変容だ。
 第2次世界大戦以降、領土や経済の問題をむき出しの軍事力ではなく国際法や外交交渉で理性的に解決しようとするのが、世界の大勢だった。だが、急速に台頭する中国などの新興大国には、欧米諸国が作ってきた規範に違和感を持ち、むきだしの力で問題を解決しようと焦るところがある。これからの国際秩序はこうした新興大国の要望がより強く反映されるはずだ。
 東アジアのパワーバランスと国際社会のルールの変化を背景にする今回の事態は、一時的なものではない。同様の問題は繰り返し噴出するだろう。長期的な対中戦略を考えないと、日本が譲歩を繰り返すことになりかねない。

'10.10.13.朝日新聞・慶応大学准教授・細谷 雄一さん

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