散歩道<3921>

                            ザ・コラム・尖閣と日中 (3)                    (1)〜(4) 続く      '
                             ケ小平氏を超える知恵は

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 紀元前3世紀、秦の始皇帝の命を受けて不老長寿の薬を求めに来日した徐福の故事に倣い、「私も不老長寿の薬を手に入れに来た」と笑わせたのは野党党首らとも懇談の席だった。国家の近代化への秘薬として「科学技術のすぐれた経験を持ち帰りたい」とケ氏が語ったのを新自由クラブ代表だった河野洋平氏は覚えている。
 新幹線に乗って「速い、速い。これこそ我々が求めているものだ」と驚き、最新工場では「いま、近代というものを見ているのですね」と感嘆。首脳会談では「中国のような貧乏の友だちをもってご迷惑でしょうが、よろしく」とおどけた。プライドの高い中国首脳とは思えない謙虚さが、かえってケ氏の大きさを感じさせた。
 そんな彼を歓迎した人も目先にとらわれない大物ぞろいだったとみるのは、ハーバード大学で「ケ小平の中国」を執筆中のエズラ・ボーゲル名誉教授だ。新日鉄の稲山嘉寛会長は東京港を渡るホーバークラフトで君津工場へ案内し、日産の川又克二会長は座間工場で最新のロボット式の生産工程を拾う。松下幸之助氏は松下電器(現パナソニック)の工場で最先端のエレクトロニクスを見せ、それぞれに協力を約束した。
 彼等は日本が勝って中国で犯した罪を意識し、平和日本を再建した体験からも、文化大革命での荒廃から新たな国づくりに挑むケ氏に共感を覚えていた。中国も過去を越えて日本を手本にしたところにケ氏来日の歴史的意味が・・・・とは、ボーゲル氏の分析だ。尖閣の棚上げ発言はそんな中でのことだった。

10.10.13.朝日新聞
・本社コラムニスト・*1若宮 啓文氏

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