散歩道<3899>
オピニオン・強制起訴(2) (1)〜(2)続く
「推定有罪」の現状覆す好機
逮捕、起訴イコ−ル有罪、という大前提をメディアも社会も容認してきたので、逮捕段階から犯人扱するかのような報道も繰り広げられてきました。捜査当局が犯人視する世論をつくり出し、密室に拘束した容疑者に「自白しないと保釈しないぞ」と追いつめ、無理な自白を強要する人質司法という手法がまかり通ってきたともいえるのです。
審査会の強制起訴権限は、刑事裁判の原則をないがしろにしてきた検察、裁判所のあしき積み重ねをただす制度です。検察が密室で「有罪立証できないから不起訴」と判断した事件についても、有罪か無罪かを判断するのは公開の裁判所であるべきだ、と国民目線で求める装置なのです。
公正な裁判を受けるのは被告の権利でもある。検察が有罪立証できないような供述調書しか作れなかったとしたら、なぜそのような調書がつくられたのかも法定で明らかにされるべきです。被告にはとても重要なことなのだから。
審査会の審査過程を公開すべきだ、あるいは、結局無罪になった時に審査員の責任をどうするのか、という批判もある。しかし、検察の起訴も強制起訴も、裁判所に有罪か無罪かを決めてもらう中間的な判断でしかなく、審査の過程を問う必要はない。「素人判断は誤審を招く」という主張は、自らの能力を過信する法曹のおごりです。
もちろん課題もあります。できる限り被告の負担を軽くする手続きを考えるべきです。弁護士費用を公費でバックアップする制度や、推定無罪である被告が公判中、仕事に支障をきたさないようにする仕組みづくり、さらには、犯人視報道に対するチェック機能も、改革を推める中で一体として議論すべきでしょう。これらは刑事裁判全般について言えることです。
'10.10.9.朝日新聞・東京経済大学法学部長・大出良知氏
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