散歩道<3880>

                          経済気象台(615)・ 内需基盤の拡大        

 昨年の世界の自動車販売は、内需基盤の重要性を再認識させた。世界金融危機の影響が少なく、より早く販売が回復した国の多くは、分厚い新興国だった。先進国でも、低公害車への買い替え奨励策が奏功した国は、内需基盤の厚い国だった。
 日本の自動車産業も2010年に入って収益を急速に回復しつつあるが、アジア新興国で販売を伸ばしたことによるもので、外需に依存した回復だ。外需依存で発展してきた日本の自動車産業の成長戦略を、直ちに転換することは不可能かもしれない。それでも、産業界全体が成長の軸足を外需から内需に少し戻すことを考えるべき時期ではないか。
 かって、日本の自動車産業は、国内需要の拡大を背景に発展を遂げた。国内市場での厳しい製品開発競争や販売・サービス競争によって鍛えられ。世界に通用する商品を獲得した。しかし、最近は売上高の国内比率が低下。国内市場から世界に通用する製品を鍛えあげるパターンが消えつつある。
 低公害車への買い替え・新規購入補助金は、予算枠の5800億円強を消化し、9月7日付けの申請で終了した。この補助金だが、自動車をいずれ買い替えよと考えていた消費者にはありがたいものだったが、内需基盤の拡大につながったとは言いがたい。
 中期的な内需基盤の拡大には、国内雇用の安定的拡大や国民所得水準の上昇が不可欠。補助金の一時的効果が持つ意義は大きいが、内需基盤拡大につながる効果的経済政策が打たれなかったのは、政治の責任である。かくして、内需基盤の拡大は先送りされ、産業界の外需依存は続くが、いつまで許されるかは疑問だ。

 '10.9.14.朝日新聞