散歩道<3859>
クルーグマンコラム・2010年の1938年(2) (1)〜(3)続く
同じ過ちを繰り返すのか
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私たちの何人かが心配したように、オバマ政権の当初の経済政策が不十分だったために、経済政策、そして米国そのものが政治的なワナにはまってしまった。もう一段の刺激策が絶対に必要だったのに、オバマ政権の当初の政策が人々を納得させるような景気回復ををもたらすことができなかったことに注目が集まってしまい、雇用を創出するための政府の行動に対する信用を損なってしまった。
要するにこれは、「1938年へようこそ」ということなのだ。
1937年、ルーズベルト大統領が財政赤字を削減する時だという人々に配慮しようとして、破滅的な決断をした話はよく知られている。この話ほど知られていないのは、その決断の後に起こった景気後退から人々がいかに誤った結論を引き出しているかということである。当時の有権者はニューディール政策の再開を求めるどころか、政府支出を拡大することへの信頼を失ったのである。
1938年3月のギャロップ社の世論調査を見てみよう。景気の落ち込みを防ぐ為に政府支出を拡大すべきかどうかについては、63%がノーと答えた。政府支出を増やすことと事業税を引き下げることのどちらがよいかについては、政府支出の増加を選んだ人は15%にとどまり、63%は事業税の引き下げを選んだ。1938年の選挙で民主党は大敗北を喫し、下院で70議席、上院で7議席うしなった。
そして戦争が始まった。
経済的観点から見れば,第2次世界大戦は、なによりも財政赤字を伴う政府支出を爆発的に増加させた。それは戦争がなければ到底認められなかったほどの規模だった。第2次世界大戦を通じて、連邦政府は1940年当時の国内総生産(GDP)の約2倍もの借金をした。ざっと今日の30兆jにも相当する。
大戦のずっと前にその一部でも支出しようと提案するものなら、人々は今日と全く同じことを言っただろう。彼らは破綻を招くほどの債務と手に負えないほどのインフレについて警告しただろう。彼らはまた、不景気は主に過剰債務で引き起こされたものであると言い、この問題は借金を増やすことでは解決できないと断言しただろう。
だが、どうなっただろうか。赤字を伴った財政支出によって、にわかに好景気が生み出され、その後、長く続く繁栄の基礎を築いたのだ。公的部門と民間部門を合わせた当時の借金は、経済成長と、ある程度のインフレが突出した借金の実質価値を減らしてくれたことで、実際にはGDPの1%まで下がったのだ。戦後、民間部門の財務状態が改善したため、米国経済は借金を増やすことなく成長することができた。
'10.9.9.朝日新聞・米プリストン大学教授・*1クルーグマン
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