散歩道<3858>

                         クルーグマンコラム・2010年の1938年(1)                                 (1)〜(3)続く
                              同じ過ちを繰り返すのか                     

 こんな状況がある。米国経済は金融危機で痛手を被っている。大統領の打ち出した政策はその痛手をある程度抑えはしたが、あまり慎重すぎたため失業率は悲惨なほど高い状態が続いている。追加策が必要なのは明らかだ。しかし、国民は政府の姿勢に嫌気がさしていて、中間選挙では民主党に手ひどい敗北をもたらそうと構えているかのようだ。
 こんな難局にかってたたされた大統領がフランクリン・ルーズベルトだ。時は1938年。数年後に大恐慌は終わるわけだが、1938年ごろの米国のおかれた状況を学ぶことは、ためになると同時に、がっかりした気持ちにもさせられる。
 ためになるのは、当時の経済回復の本質が、いま支配的である議論の誤りを証明してくれるからである。がっかりした気持ちにもさせられるのは、1940年代におきたような奇跡が再び起こりそうな様子にないからだ。
 いま、私たちが1930年代後半に起きたことを再び繰り返すことになろうとは考えもしなかった。オバマ政権のエコノミストたちは、ルーズベルト大統領が財政刺激策からあまりに早く手を引いてしまった1937年の過ちは繰り返さないと誓った。しかし、財政刺激策をあまりに小規模かつ短期間としてしまったことによって、オバマ氏はまさに同じ過ちを犯してしまった。刺激策は、それが続く間は経済成長を促したものの、失業率をほんの少し改善させただけだった。そしていま、刺激策は終わりつつある。

'10.9.9.朝日新聞・米プリストン大学教授・*1クルーグマン

関連記事:散歩道<2662>*1クルーグマン大不況克服へ巨額財政出動せよ<検>政治、<検>社説、