散歩道<3835>
                           経済気象台(608)・空洞化の恐ろしさ

  東京の大田区や墨田区を中心とした町工場、東大阪を中心とした中小企業、自動車産業への部品供給工場の集積地である中部地区。大企業が国際化と称して、海外へ生産拠点を移すということは、こういった東京の下町、東大阪、中部地区の中小製造業も、海外移転か事業閉鎖の選択を迫られる。
 その結果、ハイテク町工場は海外移転、ローテク中小企業は工場閉鎖となる。
 政府は、国内から事業所が消えることの恐ろしさ、社会現象を具体的に考えたことがあるのだろうか。
 中小企業が消えると、最初に従業員が解雇される。企業にかかわっていた会計事務所、原材料の仕入先なども仕事を失う。失業率は上昇し、商店街は廃れ、郊外の大型店も売上げは減少、町から活力は消え、治安も悪化しかねない。
 だが、国内経済運営の無策は、円高・株安の現象に表れ、企業は海外移転を加速せざるを得ない。企業の海外移転は企業名と建物だけの移転ではなく、資本と人材と技術が同時に移転するのである。
 国内経済の活性化こそ空洞化を防ぐ唯一の手段だ。政府は単に景気回復と言ったことだけではなく、この国の将来を見通した基本政策の作成と実行に取り組むべきだ。
 活力ある社会とは、ある程度の経済成長が見込める社会だ。それを目指すため、税法の抜本的改革やあらゆる許認可事務の手続きの簡素化、規制の見直しなど、必要な改善点は限りないはずだ。健全な経済成長がない限り、財政再建への道もあり得ない。
 国民生活の基本となる経済政策、国家百年の計の道筋が必要だ。このままでは国民の国に対する関心は薄れ、心までも空洞化を招いてしまう
'10.9.1.朝日新聞

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