散歩道<3823>
社説・米軍のイラク撤兵(3) (1)〜(3)続く
重い教訓に向き合うとき
軍事力過信の戒め
イラクは今も混乱の中にある。3月の国民議会選挙後も宗派対立などで新政権ができず、政治空白が続く。
ブッシュ路線を批判してきたオバマ氏が大統領になった米国は大きく方針を転換した。今は、国連や国際社会を説得してイラク再建を目指している。それは、「予防戦争」でイラクを壊し乱した米国の、国家としての重い責任でもある。
そのオバマ大統領が、アフガニスタンについては「必要な戦争」と呼び、就任後、駐留米軍を3倍に増やした。だが、アルカイダーとつながった政権を打倒しても人心をつかめず、国の復興・再建やテロ対策が難航している現状は、イラクでの苦悩を想起させる。
英国のミリパンド前外相は、「対テロ戦争」の過ちのひとつに軍事力への過信を上げる。戦果と犠牲者の拡大は、テロを防ぐ味方を必ずしも増やせない。この教訓を米国はアフガニスタンでも強く認識しておいて欲しい。
日本はイラク戦争を支持し、イラクの「非戦闘地域」に自衛隊を派遣した。同盟国・米国に寄り添う動きだった。不確かな情報に基ずく戦争を支持したことをどう総括するのか。「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、いまこの私に聞かれたって、わかるわけない」(小泉純一郎首相の国会答弁)といった状態での自衛隊派遣は、誤った選択ではなかったのか。
日本の意思決定検証を
与党・政府内では、イラク問題の背後で北朝鮮問題が見え隠れした。「北朝鮮問題があるのに、(イラクから)いち抜けたと言って日米同盟が悪くなっていのか」(自民党幹部)との声も聞こえた。実際のところ、政権の中でイラクと北朝鮮の問題をどのように関連ずけていたのか。
菅直人首相は、民主党代表として、大半が戦闘地域のイラクへの自衛隊派遣は違憲状態だと指摘していた。民主党政権はこの歴史から何を学び取るのか、今こそ明確に示す必要がある。
戦争に関する国家の意思,判断は、厳しい検証を受けなければならない。さもなくば、今後の国家運営、とりわけ外交と安全保障政策に何の教訓も残さないことになる。
参議院の調査会で集中的に審査するなど、国会でイラク戦争をめぐる意思決定の検証作業をすべきである。
'10.8.23.朝日新聞
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