散歩道<3784>

                       オピニオン・歴史をつくれるか 民主党政権(5)                (1)〜(6)続く                          

        
 原点回帰必要な首相 部分連合で経験つめ

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 以上、鳩山政権のもとでのトランジションを眺めてきた。ここからはトランジション「第二幕」となる菅政権を展望したい。
 菅さんはリアリストだ。元来、着地の仕方がうまい。彼が市民活動家だった70年代からの付け合いだが、その印象は変わらない。
 それは政治スタンスの変遷にも表れている。77年、社市連を立ち上げた時、菅さんは「55年体制」からこぼれた人たちをまとめ、体制を変えようと目論んでいた。それが90年代になると社会党の社会民主主義の一派と政策集団「シリウス」を結成。その後リベラリズムに転換、さきがけを経て、民主党を結党した。一見、節操がないように見えるが、彼なりの政治的な判断で、批判的な学者を尻目に立場を変え、見事に成功させた。
 連立政権における政策協定の重要性をいち早く理解し、活用したのも菅さんらしい。96年、村山政権から橋本政権に交代するにあたり、さきがけの政策担当として政策協定に薬害エイズ訴訟の真相究明を入れたが、たまたま厚生相になると自らこれに取り組み、官僚の反対を「協定にある」と押し切り成果をあげた。そういう政治センスは抜群で、現実に追随するだけのリアリストを超えている。
 そんな彼が、参院選の敗北から政権を立て直すにはどうすればいいか。再出発に必要なのは、なによりも「初期化」、原点回帰ではないか。具体的には、官僚主導からの脱却、土建国家からの脱皮、対等な日米関係、子どもは社会が面倒をみるという理念、地球温暖化阻止の構想などの民主党の理念を再確認し、リアリストらしくその実現に努めるのである。

'10.8.10.朝日新聞・東京大名誉教授・篠原 一さん

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