散歩道<3765>
                               ザ・コラム・郵政改革と財政(3)                    (1)〜(3)続く
                             郵預が国債暴落を防ぐ日

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政府が郵預や簡保の資金の使い道をコントロールできるなら、市場の投資家が国債を売り始めた時に、郵政マネーで国債を買い支えることができる。郵預や簡保との契約条項を調整することによって、国債の返済を実質的に先延ばしすることもできるかもしれない。つまり、財政再建が進まず、財政悪化で国債市場が不安定になるならば、郵預や簡保を官業のまま維持することは、日本にとって必ずしも悪いことではない。国債暴落を防止する緩衝材として郵預・簡保を使えるからである。
 財政再建が進むなら、郵政を民営化して、国債買い替えを止めさせるべきだが、財政再建が進まないという前提に立つと、むしろ郵政民営化を進めない方がいい、というわけである。
 どちらが良いかの判断は、日本国債への信認が失われるリスクがどれだけ差し迫っているかによる。市場の現状からは国債暴落のリスクは少ないように見えるが、意外なところ落とし穴があるかも知れない。
 それは欧米経済がデフレになる危険と関係している。金融機関の間では、欧米のデフレが懸念されているが、もし日本より激しいデフレになれば、ドルやユーロの通貨価値が上昇する。物価の下落は通貨価値の上昇だからである。すると、日本円の価値はドルやユーロに比べ相対的に下がる。そうなれば、円資産である日本国債の魅力が失われ、投資家が日本国債を急に売り出すかもしれない。
 その時、もし郵政民営化が中途で止まっていれば、それは結果的に日本にとって幸運だった、と後世から評価されることになるだろう。

'10.7.28.朝日新聞経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏
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