散歩道<3764>

                               ザ・コラム・郵政改革と財政(2)                    (1)〜(3)続く
                             郵預が国債暴落を防ぐ日

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 こうみると、郵政改革は日本の財政改革のあり方という大きな枠組みの中で考える必要があると分かる。郵政の改革が、日本の国家財政の改革という大きな問題に含まれるとすると、財政の行方と無関係に「郵政」だけを取り出して、民営化が是か非かを問うても意味がない。
 特に考えなければいけないのは、郵預・簡保の巨額資金(郵政マネー)の多くが国債の買い支えに使われていることだ。近年、郵預・簡保には約300兆円の資金が集まり、その7〜8割が国債に投資されている。2009年末の国債発行残高(財投債を含む)は約716兆円。ほぼ3割が郵政マネーでまかなわれていることになる。
 現状でが、与野党が一致して財政再建を進め、国債の発行が減少する、というシナリオが近い将来に実現するとは考えにくい。民主党政権のもとで、非常に大胆な歳出カットが実現したとしても、雪だるま式に膨れあがる国債残高を安定させる所まではいかない。
 国債などの借金の残高は、1
2年後には日本経済を示す国内総生産の2倍を超え、増え続ける。これは第2次大戦後の日本の財政状況よりも悪い。国の借金がこれほど大きくなると、「政府は借金返済ができなくなるのではないか」と国債保有者が不安になるはずである。普通なら国債の買い手がいなくなってもおかしくはない。 だが現実には、国債の買い手は増える傾向にある。日本の民間部門の経済活動が弱いため、民間に投資するより国債に投資する方が得だと投資家が判断しているのが一因だ。金融危機の後遺症で、欧米や米国の家財先行きが不透明なため、欧米の債権よりも、日本の国債の方が安全な資産であると世界中の投資家が考えていることもある。
 現在のように、日本の国債が市場で難なく消化される状況が続くなら、国債残高が膨れ上がっても問題にはならない。しかし、日本の財政悪化が止まらなければ、いつか投資家は国債に背を向けるだろう。その時には、郵預や簡保の民営化が進んでいない方が、日本経済全体にとって良い場合があるかも知れない。

'10.7.28.朝日新聞経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏