散歩道<3754>
Opinion・民主党外交(2) (1)〜(2)続く
アジア諸国との安保対話を
日米同盟を動揺させた鳩山外交に対しては、多くのアジア諸国から懸念の声が上がった。その結果、期せずして、日米同盟がアジア太平洋地域の公共財であることが再確認されることとなった。そのことは、対米外交とアジア外交を戦略的に調和させるという、日本外交にとっての古くて新しい問題を突きつけているのではないだろうか。
その際、日米同盟が地域の公共財であるという側面とあわせて、アジアへの侵略戦争の歴史を抱える日本は日米関係がなければ外交的に自立し得なかったという、戦後の深い現実も直視する必要がある。そうした現実を踏まえた外交論を唱えた戦後の学者の一人が、永井陽之助であった。永井は1980年代前半に、ソ連脅威論を振りかざす「軍事日米同盟リアリズム」に対し、対米関係を基軸とした軽武装路線に「政治リアリズム」を見いだした。そして、そこに戦後日本の自立と成功の鍵があると論じたのである。
菅直人首相は、大学時代に「現実主義」を学んだ師として永井の名を挙げた。永井の「政治リアリズム」に日米同盟とアジア外交を両立させる感性を嗅(か)ぎ取ったのかもしれない。菅内閣は1日も早く、日米同盟の動揺を懸念する韓国などアジア諸国と、安全保障対話を始めるべきだろう。沖縄の過剰な負担の軽減という課題にも、アジア太平洋を俯瞰(ふかん)した地域的な視野から米軍の役割を見直すことによって、新たな視界が開けてくるかもしれない。
'10.7.21.朝日新聞 慶応大学教授・添谷 芳秀氏