散歩道<3742>

                        経済気象台(593)・リーダーの大安売り

 人格や識見に優れた人物が、人々を納得させながら、われわれのやるべきこと。「一歩先」を指し示し、生きる意欲をかきたてる。これがリーダーシップである。政治の世界でも会社でも、リーダーシップが失われてきた。なぜ、こうなったのか。
 人間はほっておけば短時間で成果が見えることをやって評価されようとする。しかし、そんな「その他おおぜい」とは別に、遠い先を見ているリーダーが、昔はいた。50年後の日本、10年後の会社はどうデザインするか・・・。長い目で考え、目立たぬ努力を重ねる先導者がいた。しかし、リーダーシップを発揮すべき立場の人々が忙しくなりすぎた。政治家も会社の幹部も、みなチマチマした雑用に追われ、時間の刻み幅が小さい。大切なことを考える時間を与えられていない。彼らを忙しくさせてはならないのである。
 オバマ大統領は就任直後、記者会見で頻繁にやりすぎて失敗した、発言が増えて重みがなくなり、リーダーシップを損なったと言われる。今は官民を問わず、世界中どこでもリーダーの大安売りだ。「上の者がドタバタ働き、彼らに失敗がないか、下が考えてチェックする」傾向も目立つ。リーダーシップの蒸発である。
 当然、責任者に語らせる場面も必要だ。失敗したトップに責任をとらせよう。しかし、のべつリーダーを引っ張り出し、彼らの時間を奪い、首をすげ替えつづけたら、社会は秩序と安定を失っていく。
 社会がリーダーになる人材を育成し、リーダーに選んだ人材には考える時間を与えて、じっくりと仕事をさせる、先人たちは、そういうリーダーつくり方、使い方を実践していた。

'10.7.3.朝日新聞