散歩道<3634>
                      
                         opinion新世界・国々の興亡
                         グローバル化「国家の復権」導く(5)         (1)〜(5)続く

     経済統合に向けた協調こそアジアの利益


・・・欧州は過去の困難な遺産を乗り越えましたが、アジアはまだ過去の歴史にもがき苦しんでいます。欧州から何か助言は。
  過去の災難、犠牲あるいは罪にいつまでもこだわるのではなく、それらが起きたこと、それらを語り合うことの難しさを認めあうことです。それ以外に選択肢はないと思います。政治的な隔たりを強調するより、経済統合に向けての制度的な共同作業に取り組む方が、利益がはるかに大きいことを理解すべきです。それから、第三国の犠牲の上に利益を得ようと2国間で同盟を結んではいけません。欧州におけるそうした試みはすべて失敗しました。安定した東アジアの可能性は、他国を出し抜いてどこかと手を結ぼうと競うことはしないということにあると思います。もう一つ。米国にえこひいきしてもらおうと互いに競うことが欧州では見られましたが、結果はほとんどマイナスに働いてきました。そのことも頭に入れていた方がいいでしょう。

・・・21世紀はアジアの世紀になりつつあるとの考えが広がっていますが、そうではないという人もいます。あなたの考えは。
  「アジア的なモデル」というものがあるとは思いません。中国の最も重要な側面は、個人と企業の十全な権利を基盤とする社会構造が不在の、むき出しの資本主義だということです。短期的にうまくいっても、長期的には世界的な(発展)モデルになるとは思いません。また、日本と中国は非常に異なっており、「中国・日本モデル」というのも無理だと思います。一つ指摘しておきたいことは、ボーイングやIBM、マイクロソフトが新製品を開発する時には中国でも米国でもなく、まず健康や安全、独占問題などで欧州の規制に従っているかどうかを確認しているということです。欧州は大きな経済ではないが、豊かな経済です。ただ、経済的に重要なことと地勢学的に重要なこととが分化し、地勢学的な中心は太平洋に、経済的な中心は多様になっていくと思います。


'10.6.1.朝日新聞・ 歴史家・ニー・ジャット