散歩道<3635>
opinion・座談会・「小鳩」が落ちた
政権交代ここまでが序幕(1) (1)〜(7)続く
・・・突然の辞任をどう見るか
岡本 大変残念だ。鳩山政権がもともと抱えていた未熟さと、自民党の政策とあまりにも対決型だったことが、こういう結果をもたらした。物事をよく勉強しないでぽんぽんと言ってしまう。普天間はその象徴。海兵隊の「足」だけを切り取って短期間に県外にもっていくことが不可能なのは、最初から分かりきっている。自民党政治との差別化を図ろうとこだわっても進展はない。外交・安保政策には継続が必要な部分がある。自民党政治には欠点もあったが、日本に今日の平和と安定をもたらしたことは事実だ。最初から全否定してかかるのはどうか。差別化が自己目的化してしまった。ただ、鳩山さんは学習のスピードは遅かったが、だんだんきちっとっした指導者になってきていたと思うので、やりかけた以上は全うしてほしかった。
御厨 けさ知って。すぐに「小沢さんはどうなのか」と聞いた。小沢さんも辞めるとわかり、「これは抱き合い心中だ」と思った。鳩山さんは良くできたと思う。できないだろうというのが僕の予想だった。通常の状況で小沢さんは辞めるようなタマではないから。鳩山さんは最後になって二つだけ決断した。ひとつは社民党の福島瑞穂消費者担当相の罷免。ひとつは小沢さんを切ったことだ。将来、この二つの決断が鳩山さんの功績として残るだろうという気がする。政権交代以来ここまでが序幕。これから本当の第1幕が始まる。汚(けが)れがある幹事長と、多少お金の点で問題を抱え、加えてリーダーシップの点でもっと問題のある首相という2人の芝居が終わり、ようやく政治がスタートするのかな。それが辞任に寄せる感想だ。
成田 心中論に私は異論がある。2人の関係はそれほど悪くない。整理すると二つの問題があった。政権交代にかかわる問題と、鳩山さんの政治家の資質の問題だ。政権交代で新しい政治が始まるわけだが、実は交代時というのは、権力のリアルズムがものすごく先鋭に問われる。中国では王朝が交代すると家臣が大量虐殺された。現代の政権交代も同じ。権力を動かす為には、強力なリアリズムが求められる。そういう時期に「友愛」という理想主義的な精神を掲げる鳩山由紀夫という政治家は、実は向かなかった。リーダーが掲げる目標として「友愛」は極めてあいまいだった。
'10.6.3.朝日新聞・座談会・「小鳩」が落ちた、 東大教授・御厨 貴さん、駿河台大学長・成田 憲彦さん、外交評論家・岡本行夫さん