散歩道<3630>
opinion・新世界・国々の興亡<10>
グローバル化「国家の復権」導く(1) (1)〜(5)続く
・・・今後20年くらいの間で、欧州はどんな脅威に直面するでしょうか。
最大の脅威は欧州が世界の困難な問題に背を向けて引きこもってしまうことです。あたかも「欧州は繁栄している。欧州は安全だ。欧州にはロシアを除いて明白な敵は存在しない」と。欧州連合(EU)が大統領と外務・安全保障上級代表を選出した時、彼らは申し分ないとはいえ、どちらかと言えば小粒な人々でした。欧州は大きな国際的な野心を持たなくなったのです。また、EUは政治的な選択でなく、経済的な取決めや共同の農業政策、司法制度などで制度的に築かれました。各国の政治家はこうしたEUの法律や規制を攻撃しがちです。それは国内政治で短期的に得点を稼ぐかもしれませんが、長期的には悪影響を及ぼすでしょう。経済的な困難さが増すと、移民問題や文化の衝突が起こり、移民や外国人労働者を規制しようとするナショナリズムの政治が強まっていくでしょう。もう一つは欧州と接するロシアとトルコとの関係です。トルコのジレンマは非常に大きなイスラム民主主義国家ということです。欧州がトルコは大きすぎて貧しすぎ、イスラム教徒が多すぎるからEUには加盟できないと言えば、そのメッセージは明白です。欧州はイスラム教徒のためのものではないと。トルコは方針を転換するでしょうし、これは実際に起きています。
'10.6.1.朝日新聞・ 歴史家・トニー・ジャット
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