散歩道<3521>
私の視点・日本ブランド (1)〜(2)続く
未来への「投資」が危機を救う(2)
ところが、この日本ブランドは、ほっておけば溶解して色あせてしまう。日本文化の根底を成す日本語や芸能、文科を人類共通の文化遺産、すなわち一種の「公共財」として世界に普及していく努力が大切だ。
その努力は海外進出企業や大学、NPOも担えるだろうが、やはり触媒役を果たす機関が必要だ。だが、この分野の財団や文化交流団体の財源や人材確保は全く心もとない。日本語普及と日本文化の世界への発信を主任務とする国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)の基金は今年度、340億円も削られてしまい、日本ブランドの発信源であり、それ自身も一つのブランドである「ジャパン・ファウンデーション」の名は崩れかねない有り様だ。
中国が国家ブランドの強化に乗り出し,孔子学院を世界中に打ち立てている現実を目の前にして、日本が国際的公共サービスとしての日本語や日本文化の世界的普及にもっと力を入れてこそ、東アジア共同体形成にあたっての立場も強化できるだろう。日本語普及や日本研究支援、さらには日本文化の普及活動といった事業に従事する人材の「経費」はコストではなく、未来の日本人のための投資と見なすべきだ。
国際交流の現場で働く人々とは、汗と苦渋のなかで悩んでいる。国際的公共サービスの質的向上を図り、日本ブランドを維持するために必要なことは、不条理な劇場政治ではなく、地に足のついた真剣な議論の積み重ねと、20年、30年後を見据えたビジョンを作ることではなかろうか。
'10.4.23.朝日新聞・国際交流基金理事長・小倉 和夫氏
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