散歩道<3487>
経済気象台(556)・成長産業の落とし穴
多くの人が、日本経済の成長を支える産業として、医療・介護分野を挙げている。自民党時代から現在に至るまで、政府はその成長戦略において、「医療・介護=成長産業」論を展開してきた。実際、総務省によれば、医療・福祉分野の就業者は増加を続け(2009年621万人)現在では建設業を上まわっている。
しかし一方で、それら産業の拡大が社会的コストを高める側面を持つことに、もっと注意を払う必要がある。医療・介護需要(とりわけ高齢者の需要)が高まり、またそれに伴って技術やサービスが高度化していけば、企業や家計が払う保険料負担も、また税金や国債発行によって賄われる国庫負担も増える。消費税の引き上げが求められるのは、まさしく。増大する医療・介護需要を賄うためである。
それが大きな重荷となってきたのが米国だった。医療需要の拡大、高度化、価格上昇に伴う医療費や保険料の膨張は、個人消費増加の最大要因であり、結果的に、家計はそれを賄うために借金を増やしてきたといっても誇張ではない。GMが破綻(はたん)したのも、現・旧従業員やその家族向け医療保険支出の増大が、主因の一つだった。
つまり現在の枠組みでは、医療・介護産業が成長すればするほどコストが増大し、成長の制約になりかねないということだ。それを回避するためには、医療サービス供給の効率化やコストの引き下げ、価格の合理化、規制緩和による経営や診療の自由度向上、海外の需要や労働力の取り組みなどを通じて、関連産業の生産性を引き上げることが不可欠である。そうでなければ、成長産業として経済成長を牽引するという期待は、絵に描いた餅となりかねない。
'10.3.9.朝日新聞
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