散歩道<3488>

                           経済気象台(557)・デフレは止まるか

 デフレの要因は需給ギャップだという人がいるが果たしてそうか。各産業界がこぞって供給能力を落としてもわが国のデフレが収まるとは思えない。
 1985年のプラザ合意を受けて円の価値は瞬く間に2倍になり、わが国の賃金レベルはドル換算で世界一高いものになった。本来ならそこから物価下落が始まるはずであった。ところが金融と財政が共同で作り上げたバブルと、日本株式会社ともいわれたわが国の社会構造の中でその後も10年近く賃金は上昇し続けたのである。だがグローバル化の高まりはわが国の高コスト構造を許容しない。加えて国内では規制緩和や独占禁止法の強化など価格を競わせる政策が推し進められた。建設工事などでは民事再生法で身軽になった企業も交え異常なほどの安値受注合戦が今も続いている。企業は人を減らし、下請けや非正規雇用に置き換え、さらには安い海外で物を作らせあるいは事業拠点そのものを海外に移した。だが海外が実力をつけるほどに国内企業は厳しさを増す。わが国経済は収縮せざるを得ず物価は下がり続ける・・・・・。時の流れの中で多少の紆余曲折
(うよきょくせつ)はあっても基本的にはこういうことであろう。しかも円高は更に進み今や1j=90円である。
 恐らく近隣諸国との人件費格差がもっと狭まるまでわが国の人件費に対する下げ圧力は続くだろう。中国の労働需給がタイトになり大幅に賃金が上がるとか、元が大きく切り下げられるとか、逆に日本経済が衰退し円が大幅に安くなるとか、そんなことでも無い限り我が国のデフレは止まらないのではないか。
事態をきちんと認識したうえで国は長期戦略を練り、的確な政策を実行しなければならない。

'10.3.25.朝日新聞