散歩道<3464>
社説・ギリシャ支援(2) (1)〜(2)続く
ユーロ進化への転機に
しかし、EUの経済は一体化しても、人びとの欧州市民としての連帯意識が同じ水準にまで成熟しているわけではない。その溝を埋めるためにIMFという国際機関の力を借りて軋轢(あつれき)を和らげる必要があったのだろう。
ただ、支援方針は決っても、ユーロの試練はまだ続く。これから大量の国債償還を迫られるギリシャへの市場の懸念は依然として消えていない。財政赤字削減のためギリシャは痛みをを伴う改革を実効しなければならない。
「政府なき通貨」であるユーロは自らを支える強固な財政基盤をもっていない。その制約の下で危機の再発を防ぐには、加盟国の財政を監視するEUが、放漫財政を正すための権限と能力を強める必要がある。IMFの欧州版ともいえる欧州通貨基金の設立議論の行方にも注目したい。
ドルに対抗する有力通貨に育ったユーロは、進化を続ける欧州連合の最大の成果であるが、危機が問いかけているのは、一体化した経済に政治が追いついていないEUの構造的な問題だ。このまま立ちすくむのではなく、ユーロを進化させる転機にしてほしい。財政破綻(はたん)の回避はギリシャやEUだけの課題ではない。アジアでも金融危機の体験を踏まえて、危機回避の仕組みを整えようとの機運が高まっている。EUの経験は参考になる。
巨額の財政赤字を抱え込んでいる日本こそ、「予告された破局」に最も近づいている国である。そのこともあらためて銘記しておきたい。
'10.3.29.朝日新聞
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