散歩道<3440>
社説・耕論・グーグルに見る米中情報戦(3) (1)〜(3)続く
権威脅かす「自由」な中国人
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同時に私は、中国人たちがグーグルへの支持を表明したことにもおどろかなかった。なぜなら、多くの中国人たちが自由や情報を本当に求めているからだ。深層では、権力を疑う気持ちがかなりあると思う。
中国人はみんな政府を支持していて、政治や自由には興味がなく、金もうけさえできればいいのだ、という人たちがいるが、それは決して正しくない。大勢の中国人たちはそうした事柄を気にかけている。
おそらく中国当局は、自国民の反応に衝撃を受けていると思う。最も気にかけているのは国内の不穏な動きだからだ。
数年前に中国で反日デモがあった。当局はそうしたデモを操作しようとしていたが、一方でその種のデモが、中国当局そのものへのデモに急転しないかどうか非常に気にしていた。今回も同様に、中国の国家主義者たちの間で、反グーグルや反外国人のデモが起っているが、そうした抗議活動は簡単に中国当局へと向かいうる。当局には、非常にデリケトな問題だ。
実は中国には当局に対する抗議活動には長い歴史がある。反政府デモは中国では珍らしいことではない。中国当局は、人々に消費者としての個人の自由を許しながらも、組織だった動きは徹底して取り締まるという、ソ連も決してやらなかったことを行っている。抗議活動を管理し、社会・政治にとっての本当の脅威に発展するのをなんとか押さえこもうとしているのだ。
同時に中国は、シンガポールや、ある意味で日本の55年体制と同じようなことを実施して、成功している面もある。日本では中産階級の大規模デモをさせない一方で、所得倍増を約束するという一種の取引が成立していた。中国も、中産階級にデモを禁じる一方で、より豊かになることを約束している。
国が丸ごとシンガポールのようになれればいいと、中国政府は思っているだろう。ただ中産階級の一部はより自由を求め始めており、それはインターネットで起り始めている。グーグルにに花を手向けたのがそうした中産階級の人々だ。
天安門事件を中産階級の学生たちが起こしたのと同様に、今回の中産階級の動きに中国政府は非常に神経質になっている。農民や労働者たちなら、警察権力で押さえこめるとしてあまり気にしていない。しかし、中産階級が反逆し始めることは、神経をとがらせている。
短期的には、当局は組織だった動きはコントロールし続けるだろうし、大きな影響があるとは思えない。しかし、中国の人々に、情報を得る自由について考えさせることにつながり、健全な議論を促進すると思う。
'10.3.14.朝日新聞・著述家、米バード大教授・イアン・ブルマさん
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