散歩道<3435>
                     社説・イラク戦争検証・日本も国家の責務として(3)                  (1)〜(3)続く

オランダでは「違法」
 
復興支援に部隊を派遣したオランダでも昨年、バルケネンデ首相の指示で元最高裁判所長官ら7人の有識者からなる独立調査委員会がつくられた。焦点は、イラク戦争の開戦をめぐる国際法上の根拠だった。
 イラクのWMD疑惑について国連案理は02年11月、国連査察団を受入れ、WMDを破壊しなければ重大な結果が生じかねないとの警告を盛り込んだ決議1441を採択。オランダはこれを主な根拠に戦争は合法とした。
 調査委の結論は異なった。決議は個々の国々に軍事力行使を認めてはおらず、イラク戦争は国際法に違反している、と断じたのだ。
 01年の就任後、ブッシュ政権との関係強化を政権の柱としてきた小泉純一郎首相はイラク戦争をいち早く指示した。違憲性への疑念を「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域だ」という強引な論理で押し切り、人道復興支援として自衛隊派遣に踏み切った。
 その全体像が検証されなければならない。英国は開戦時と同じ労働党政権、オランダでは同じ首相の下で調査委員会が設けられた。鳩山政権はもちろん、自民党も党利党略のための作業でないことを認識してもらいたい


小泉政権の判断問う  
 
小泉首相や閣僚は当時、どんな国際認識を抱いていたのか。政府の法律専門家の間でどんな議論が交わされ、首相にどんな助言がなされたのか。
 米国支持の背景には、北朝鮮の脅威に対して日米の協調を損なってはならないとの配慮もあったのだろう。だが結果的に、北朝鮮は核実験を繰り返し、「核保有」を宣言した。
 また、同盟国の独仏やカナダが戦争反対の姿勢を貫いたことを日本はどう受け止めていたのか。
 検証作業に抵抗もあるだろう。しかし、貴重な先例がある。
 第2次大戦後の1951年、吉田茂
*1首相は外務省にある調査を命じた。なぜ日本が軍部の暴走を許して戦争に突き進み、敗戦に至ったのか、関係者から聞き取り、考察せよというのだ。
 まとめられた調書「日本外交の過誤」が公開されたのは半世紀後だったが、そこでは戦争回避を進める理念と勇気の欠如がもたらした敗戦という結果から考える姿勢が貫かれている。
 イラク戦は日本に直接、深刻な打撃を与えたわけではない。だが、現代の戦争に部外者はいない。まして、日本はそれに関与したのだ。
 現代史の真実を厳正に探求し、政策決定のゆがみがあれば、勇気を持って正す。将来、再び難しい外交選択を迫られた時、それがきっと役立つ。

'10.2.22.朝日新聞

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