散歩道<3427>
                     ザ・コラム・ユーロが生んだ危機の種(3)                    (1)〜(3)続く
                          欧州の財政不安
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 今回のギリシヤ問題でも、類似の状況が起きていた。危機を抜け出す為には、ギリシャが緊縮財政によって財政を再建し、市場の疑念を消し去るか、ユーロから離脱する(固定相場制の放棄)しかない。経済が弱いギリシャでは自力での財政再建は困難だ。ユーロ離脱を防ぐには、ドイツなど欧州の大国がギリシャに財政支援を行うことが避けられないだろう。しかし、問題は財政不安がギリシャ一国に限られないことである。ポルトガル、スペイン、イタリアなど財政問題が深刻な欧州諸国は多く、市場の疑心暗鬼は広がっている。安心感を回復し、ユーロを維持する為には、財政が悪化した国に欧州連合(EU)が全体として財政支援するという包括的な枠組みを作っておく必要があると思われる。しかし、それはEUの各国の財政独立性や主権を制限する大きな制度改革になるはずなので、容易には進まないだろう。それまでかなりの期間、世界経済は欧州問題の為に不安定な動きを続けることになる。

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  欧州の危機は、対岸の火事ではない。世界の金融市場が混乱すれば、リーマン・ショツク後のような景気対策が再び必要になる。又、見方を変えれば、米国の住宅バブル崩壊や欧州の財政危機が、日本やアジアの株価や金融の状態を決定的に左右するような現在の世界の金融構造こそ問題だ、とも言える。アジアの新興国は製造業など産業活動では欧米に追いつきつつあるのに、金融市場、特に国債や通貨の市場は発展していない。金融活動では、欧米の存在感が圧倒的である。単純化すると、アジアが製造業で巨額の資金を稼いでも、その資金を投資するのはアジアの金融市場が貧弱すぎるために、欧米の金融資産に投資せざるを得なかった。そのために、欧州の財政問題がアジアや世界の金融を直撃することになった。
 米住宅バブル崩壊からの一連の危機は、欧米に偏った世界の金融構造の危険性を端的に示している。高成長が続くアジアなどの新興国に、多様で活発な金融・通貨市場を発展させることが世界経済のバランスと安定を達成するために重要だ。日本も、今回の危機を教訓に、アジアの金融市場の発展を一つの目標として経済政策を進める必要がある。


'10.2.25.・朝日新聞・経済産業研究所上席研究員・小林 慶一郎氏

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