散歩道<3415>

                         経済気象台(543)・ボルカー・ルールの問題     

 オバマ政権が、金融規制の指針を発表した。銀行の自己勘定取引業務や、市場シェアに対する規制強化する内容だ。金融危機の再発を防ぐべく、行き過ぎたリスクテークや銀行の規模を制限しようとするもので、推進役のボルカー元FRB議長にちなみボルカー・ルールと呼ばれる。バブルの根底に、国を挙げての陶酔があったとしても、それをあおったのが大手金融機関だったのだから、その暴走や市場・経済への悪影響を防ぐ仕組みを作ることはただしい。しかし一方で、経済や企業の成長を支えるのが、柔軟で効率的な金融システムだということが看過されているのではないか。
 グローバル化
や技術革新が進展する中で、経済は多様化し、変化のスピードも振幅も増大した。企業や個人にとっては、成長チャンスが広がる一方で、リスクも大きくなった。そのような環境変化に対処するために、金融技術革新が進み、多様な金融サービスとそれを担う多彩な金融機関、ファンドなどが生まれ、成長機会を高めてきた。
 そして金融システムが円滑に機能するための基盤となっていたのが、信用創造の中核としての銀行だったし、強い競争力を有する銀行を擁していたがゆえに、米国経済は幾度もの停滞を乗越えて、成長を続けることができた。今後の金融規制が、銀行の競争力を過度に制約するものとなれば、金融システム全体の効率性、柔軟性が失われ、成長力も弱いものとなろう

 金融規制のさじ加減は難しい。マクロ経済政策のような定量分析も困難である。しかし、羹
(あつもの)懲りて膾(なます)を吹けば、経済が成長力を失うリスクがあることを留意することも必要である。

'10.2.9.朝日新聞