散歩道<3416>

                      経済気象台(544)・強いところをより強く

 ここにきてようやく分配論より国富論だ、という機運が盛り上がってきた。それはそうであろう。おやじの収入は減りつつあるのに、あれも欲しいこれも欲しいの大合唱で散財を続けた結果、首が回らなくなったことに気がついたのである。
 今年は国の富を増やす年になりそうである。国家戦略の基本は世界に通用する技術を持つ強力な企業を幾つ持つかに尽きる。政治家が共同体だとか、口ざわりのよい話を持って走り回ってみても欲しいものを持たない国を誰が相手にするものか。この意味において、産業は一流、政治は三流というこの国のテーゼは依然として生き続けているのである。
 相手の政治家が喜んであってくれるのは、この国の技術と産業のノウハウがほしいからであり、舌たらずな政策論を聞くためではない。この意味で最近気になるのは、強者を否定する論説がこの国の一部に見られることである。
 否定しないまでも強者を矯めて弱者を育てよう、とする空気がある。あえていうが、こんなことをすれば両者共倒れは必至である。企業が育つということはそんなに甘いものではない。
 確かに、この国の世界に通用する大企業は既成階級に属し改革の妨げとなる点はあるかもしれぬ。しかし改革の名のもとに自らに票を投じない者すべてを差別化するのは、独善的利権政治そのものではないか。
 今の日本の混迷と不安はこの点にある。言いたいことはこうだ。
 「政府は邪魔するな、いろいろ施策を行うことによって官僚制
*1に代わる独裁制を築きつつあることに気付くべきだ。弱者救済を実現する道はただ一つ、強い処(ところ)を更に強くすることによって国富を増やすしかない」

'10.2.10.朝日新聞

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