散歩道<3412>

                    経済気象台(540)・日本経済の敗因と成長戦略

 昨年末、政府は「新しい成長戦略」を明らかにした。環境、医療などを中心に需要を創出し、2%の経済成長を目指すという。
 成長戦略そのものは、新成長戦略政策部会報告(2001年)から未来開拓戦略(09年)に至るまで、これまで何回も策定されてきた。にもかかわらず、日本経済の成長力が高まっていないのはなぜか。
 政府は、その理由を実行力の欠如に求めている。しかし実際には、低成長の真因と、それを是正すべき戦略・政策がずれていた可能性がある。多くの識者が、不良債権増大が日本経済の成長を阻んだと指摘した。しかし、不良債権問題が解消されても、内需は回復しなかった。成長産業が生まれても、成長力は低下し、日本経済はデフレになった。
 筆者は、企業や個人が新しい領域にチャレンジしなくなったことが、景気低迷の主因ではないかと考えている。企業や地域は、公共投資や補助金に頼る
ようになり、ベンチャーなど新たな企業や事業の立ち上げは減った。経営者が、政府に成長戦略を求めること自体、挑戦意欲の欠如を示しているようだ。戦後の経済成長が、企業や個人の未開拓領域へのチャレンジ、リスクテークと、その結果としての環境変化への迅速・的確な対応によって達成されてきたとすれば、日本経済はそのダイナミズムを明らかに失っている。
 その背景には、厳格な規制や行き過ぎた業界保護、柔軟性を欠く労働市場、効率性と多様性を欠く金融市場、市場開放の遅れ、不十分な競争政策など、成長力やダイナミズムを生み出す環境がなくなったことがあるのではないか。だとすれば、それを正すことこそが成長戦略ではないだろうか。

'10.1.26.朝日新聞