散歩道<341>

                       
宇宙の底で・根深きもの(1)・それが戦
           (1)〜(2)続く
                                        
 朝日新聞.'04.7.27.柳澤桂子様・宇宙の底で・根深きもの、それが戦争という。興味ある報告がある。人間はなぜ戦争をするのであろう。戦争にも本能が関わっているのであろうか。戦争には残虐性がつきものであるが、残虐性だけでは戦争にならない。チンパンジーなどの類人猿と人間は300万年から500万年前に分かれて進化してきたとされている。人類は今から100万年ほど前に、自分たちの生まれた土地であるアフリカを出て、約50万年後にヨーロッパに達したと考えられる。言語は80万年前に使われはじめ、我々の祖先であるホモ・サピエンスがホモ・エレクトレウスから分岐したのはたった20万年前である。チンパンジーの残虐性については前に述べたが、では、猿人(最古の化石人類)やそれより進化した原人(ピテカントロプス・エレクトゥス)はどうであったろうか。残っているものが化石だけなので、結論を出すのはむずかしい。旧人(ネアンデルタール人)や新人(クロマニヨン人)の使った石器の中には、人を殺すのに使えるものがいろいろある。また、骨の化石の中には他殺されたと思われるものが出土している。これらの旧石器時代の人々も互いに争って殺し合いをしていたのであろう。時代を経て現代の狩猟採集民について調べた結果を見ると、穏やかというイメージとはほど遠いことがわかる。*1.エンバーが報告したところによると世界各地に残る31部族の狩猟採集民のうち、2年に1度戦争をしていたもの64%.それ以下26%.全く戦争をしなかったもの10%である。*2.シャノンらの報告では死亡した.狩猟採集民の状況を見るとフリ族では成人男子の死因の19.5%が暴力によるものである。マエ・エンガ族では成人男子の25%.が戦死、ドゥグム・ダニ族では28.5%が戦死とされる。戦争を起こすのは狩猟採集民よりむしろ、農耕民である。かれらは一定の広さの土地に定住しなければならないが、作物が出来なくなると、その土地を捨てて新しい土地をもとめて移住する。そのときに移住先に先住民がいればそれを力で追い出すことになる。そして、多くの場合殺戮が行われるこの様に「人は類人猿の時代から現在までずっと暴力をふるってきたということには疑いの余地はない。原始的な戦争では武器も未開で、人々の組織も弱かったが、時代とともに、戦争の技術は向上し、殺される人の数もそれにつれて増えていった。

朝日新聞.'04.7.27.柳澤桂子様

関連記事:散歩道<254>化石人間
備考*1.エンバー:1978年の世界各地の31狩猟採集民の報告。*2.シャノン:1988年のニューギニア高地のフリ族同じくマエ・エンガ族、ドゥグム・ダニ族のの報告