散歩道<3398>

                    opnion・どうしたトヨタ(2)・「良い会社」になりすぎた                 (1)〜(3)続く

組織の官僚化すすむ
 会見について、海外の新聞が「最初のお辞儀が深くなかった」などと報じた。陳謝の場に臨む時は入念な準備をして出てくるものだ。助言する人が社長の周りにいなかったのだろうか。お行儀の問題ではなく、組織のたがが緩んでいるとしか見えない。会見を30分で打ち切ろうとしたことも「逃げの姿勢」という印象を強めてしまった。
 なぜこんなことが起きたのか。トヨタは「よい会社」になりすぎたのかもしれない。台風のような経営危機を経験した人が少なくなったのではないか。いまトヨタに入社してくるのは、「車が大好き」というより、「一生、食いぱぐれないから」という人の方が多いだろう。大企業につきものの組織の官僚化がトヨタでも進行している可能性がある。「カイゼン」などで絶えず組織を活性化してきたトヨタですらそうなら、他の企業でも当然起りえる。
 ただ、プリウスのリコールを正式発表した9日の社長会見では、技術面の説明が格段に分かりやすくなり、2時間近くかけて質疑に丁寧に応じていた。経営姿勢に「カイゼン」がみられ、対応にも「カイゼン」スピード感が出てきたように思う。
 今後の対応としては、短期的には日本のトヨタ本社が主体になり、米側をしっかりコントロールしないといけない。トヨタはこれから、米国で400万台を超える車を改修する。忙しいからといって、ディラーの言葉遣いが悪かったり、長時間待たせたりしたら最低だ。今回の事件をお客さんがディーラーを尋ねてくれるチャンスと考え丁寧に対応すれば、信頼回復でき、次もトヨタ車を買ってもらうきっかけに出来るかもしれない。
 そういうところを日本のディーラーはよくわかっており、プリウスの改修も順調にスタートした。米国のディーラーも、失った消費者の信頼を取り戻すという強い意識を持つことが鍵だ。豊田章男社長が自ら「現地現物」を実践し、米国ディーラーを回って激励すべきだ。
 ただ見方を変えると、今回の問題は「トヨタのハイブリッド車が普通の車になる最終局面に辿り着いたからこそ起きた」とも言える。当初、トヨタは大赤字を出しながらも、10年以上にわたってプリウスを量産してきた。初代と2代目ははっきり言って実験車的な部分も多く、ブレーキも「ガクッと利く」という感じだった。トヨタの開発の人がよく言うのは「現代の3代目でようやく普通の車になりました」と。ブレーキの違和感も消そうと努力して、今回の問題につながってしまった。

 
'10.2,12.朝日新聞・シティグループ証券・松島憲之氏


関連記事:散歩道<131>企業倫理・社会のために1・2・3、<検>企業、<検>事故・災害・緊急時の対応、<検>社説、