散歩道<3395> 
                           
                    opinion・どうしたトヨタ(3)「複雑化」の魔物に力負け                 (1)〜(4)続く         

過信が生んだ慢心
 第二に、追い風に乗りすぎ、オーバーペースとなった。すなわち。金融バブル由来の米国の高級車需要に対し、当時、量産型高級車を良品質で供給できたのは、複雑な製品の量産を得意とする日本の現場だった。高額車の対米輸出は急増し、トヨタは異例の高収益をあげた。それを原資に生産量、生産拠点数、モデル数を急拡大させ、ついには量でも世界の頂点に立った。エコ車開発でも先行した。
 しかし、米国バブル崩壊から歯車は逆回転する。米国高級車は壊滅し、米国トラック工場の投資時期も誤り、トヨタは大赤字となった。急増する海外工場や新モデルに対し、品質管理の人材も不足した。今回のアクセルペダル問題も、海外サプライヤー(部品会社)が設計した部品の評価・承認における不備が背景にあったと疑われる。
 そもそも「まず質を求め、結果として量を得る」のがトヨタ思想だ。ところが世界一という頂上が見えてきたころ。本社の一部に「量を計画し量を得る」風潮が出始めた。それが量が質で無理をする」結果を招いた。かくして、設計複雑化と量的急増の相乗効果で、品質管理負荷が爆発的に増大し、能力構築が追いつかなかったのだ。
  
'10.2.12.朝日新聞・東京大学教授・藤本隆宏氏


関連記事:散歩道<131>企業倫理・社会のために・3、<検>企業、<検>事故・災害・緊急時の対応、<検>社説、