散歩道<3396>
opinion・どうしたトヨタ(4)・「複雑化」の魔物に力負け (1)〜(4)続く
過信が生んだ慢心
第三に、油断もあった。トヨタが品質で世界一と称賛された1990年代、本社の一部で品質過信から来る傲慢(ごうまん)な言動が出始めた。潜在的な品質問題や事故の際、「品質は完璧(かんぺき)だ。不具合の原因は運転手にある」と主張する傾向見られた。組織風土の緩み、トヨタ思想からの逸脱というほかない。品質に自信を持つ企業が陥りがついな、慢心という落とし穴である。
確かに複雑化の時代、不具合や事故の多くは運転者、製品設計・製造・品質管理者、部品企業、整備者などの複合要因で起り、自社の責任かどうか、にわかに判定するのは難しい。しかし、そんな時代だからこそ、企業は「疑わしきは自社責任」と考えないと、顧客や社会の支持は得られない。責任を特化しにくい事例も多々あるが、それを言っては又間違える。複雑化競争に参加する企業は金輪際「想定外の使用だ」「運転の仕方が悪い」「顧客の感じ方次第だ」などと口にすべきではない。 顧客の要求も進化する。トヨタは今回、「個人差のある顧客の違和感」をリコール対象とした。以前はセーフだったが、今後はアウトとみた。進化する顧客要求を先取りするのも、先頭ランナーの役目である。
このように力不足、オーバーペース、油断、不運などにより、複雑化への挑戦で先頭を走るトヨタの歯車が逆回転した。しかし、同社本来の現場の良循環はちゃんと機能している。迅速・誠実に対処・反省・学習し、問題の根本的解決に徹すれば、挽回は可能だ。このレースはその社会性ゆえに、転倒しても棄権は許されない。立ち上がって再び走るしかない。
'10.2.12.朝日新聞・東京大学教授・藤本隆宏氏
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