散歩道<3341>

                       社説・クルーグマンコラム(3)・無知強欲 招いた人災                   (1)〜(3)続く
                              ウォール街の声を聴くな

 ブランクファイン氏は口べたなだけなのだろうか?そうではない。かれは、金融制度改革を強行にすすめないよう連邦議会に求めた際、事前に準備した証言でも同じ例を用いたのだ。「100年に一度の嵐から我々を守るようなだけの対応には抵抗すべきだ」。つまり、この巨大な金融危機は単なるまれな事故、自然の異常現象に過ぎず、我々は過剰に反応すべきではない、ということだ。
 しかし、この危機に「不慮」の要素は全くない。70年代後半から、米国の金融システムは、規制緩和と強欲が良いことだとみなされる政治風土によって束縛を解かれ、制御不能な状態にまですっとんでしまったのだ。短期的に膨大な利益を生み出した幹部には、強欲の夢を超える額のボーナスが用意されていた。そんな利益をあげる方法は、人々にローンを押し付けるとともに、「レバレッジ」をより大きく利かせることで借金をさらに積み上げることだった。
 遅かれ早かれ、この暴走システムは破滅するはずだった。もし、抜本的な変革を行わなければ、同じことがまた発生する。重要なのは、金融制度改革について金融業界の連中の意見を聞くことをやめることだ。ウォール街の幹部連中は、下院で可決された金融改革法案は過剰規制で経済を損なうと主張するだろう。彼らは、オバマ政権が提案した銀行の負債への課税処置は、愚かな大衆迎合主義への露骨な譲歩だと訴えるだろう。彼らは、金融業界の報酬に課税、または抑制策を課するのは有害で不当なものだと警告するだろう。
 だが、連中が何を分かっているのか?その答えは私が言える限りでは、そう多くはない、ということだ。

'10.1.22.朝日新聞・米プリンストン大教授・クーグルマン氏(NYタイムス・1月15日付)

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