散歩道<3323>

                    社説・日本@世界   試される政権の外交力(2)                (1)〜(4)続く
                          大過度期を生きる術学ぼう

  世界経済は、ようやくリーマン・ショック後の回復軌道に向かい始めたかに見える。
 それを牽引
(けんいん)しているのは中国を筆頭とする新興国である。IMF国債通貨基金によると、ショック後これに伴って、の世界経済の成長の約80%までが新興国と開発途上国だった。中でもアジア太平洋の成長は弾んでいる。欧米からアジア太平洋への富の移転も急速に進んでいる。
 これにともなって、新興国の発言力も高まっている。昨年末のコペンハーゲンでのCOP15(国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、BASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)と呼ばれる新勢力が登場した。先進国が提唱する「法的な拘束力のある数値削減目標」に共同で抵抗し、それを葬りさった。ちょっと前までは高成長国の代表としてBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)ということが言われた。あくまで市場の言葉だ。BASICは、グローバル・ガバナンスにモノ申すブロック。こちらは政治の言葉だ。
 当たり前のことが当たり前に起っているということかもしれない。史上初めて、世界の過半数の人間が世界の秩序について発言できる時代になったということなのだから。
 その際、カギを握るのはアジア太平洋である。G20諸国のうち9カ国がアジア太平洋経済協力機構(APEC)の加盟国である。オバマ大統領が言うように、「米国の消費とアジアの対米輸出に過度に依存する成長はもはや持続できない」。アジアの域内需要を創出し、アジアの地域統合を深める必要がある。
 その成長と機会の果実を世界と分かち合うことが大切である。それを進める上でも日本はアジア諸国、さらには米国との自由貿易協定を推進すべきなのだ。ところが鳩山政権の「新成長戦略」は、政権公約に掲げた日米自由貿易協定にも、「東アジア共同体」の核心である日韓(さらには日中韓)の自由貿易協定にも触れていない。農産物の輸入自由化をおそれてのことだが、ここは政権交代あってこその違いを打ち出したいところだ。もう一つ、APECとG20をより有機的につなげるため、G20のAPEC加盟国による非公式政策協議を始めるべきである。幸い、日本は今年11月にAPEC首脳会議を主催する。日本外交の出番である。

'10.1.7.朝日新聞・本社主幹・*1船橋 洋一氏


関連記事:散歩道<2919>対談・*1新聞の機能と役割・池澤 夏樹さんと