散歩道<3310>                            (1)〜(3)続く
                    社説・地球文明・低リスク型へかじ切る年に(3)

「地球号」を豊かに
 地球環境の危機は温暖化ばかりではない。世界の生物種は、乱獲や乱開発、強引な都市化、外来生物の侵入などのせいで、恐竜が消えた時代以来の大量絶滅に直面している。
 この星の生態系は、人知を超えた多様な生物のつながりで成り立っている。種の相次ぐ絶滅
*1は、部品の役割を知らないまま、宇宙地球号の部品をはずし続けるようなものだ。
 流れを変えるべく、今年10月に名古屋で国連生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が開かれる。議長の日本は、2010年以降の国際目標として「50年までに生物多様性を現状よりも豊かにする」ことを提案する方針だ。ここでも、政治的意思という再生可能資源の活用が重要だ。
 地球環境破壊が文明の慢性病なら、核戦争は文明を滅ぼす急性病とも言われる。核拡散がすすめば、地域紛争で核が使われるリスクが高まる。サイバーテロ集団が軍事コンピューターに侵入し、核攻撃があったように誤解させて核戦争を誘発させる危険もある。
 今年五月、核不拡散条約(NPT)再検討会議がニューヨークである。核保有国がさらなる核軍縮を確約し、非核国は永遠に核保有しない。その基本線に立って、破滅と背中合わせの核抑止から、よりリスクの小さい安全保障へと駒を進めることができるのか。
 再検討会議をどう成功に導くかで、今後のグローバルな核軍縮・不拡散政策の行方が左右される。

歴史の歯車を回そう

 人間は地球で一人勝ちし、「君臨」できる特別な存在。私たちの頭のどこかに、そんな思い上がリがありはしないか。生物医学者のルイス・トマス氏は著書「人間というこわれやすい種」(晶文社)で、次のように指摘する。
 地球では、多種多様な種が「共生」するのが摂理だ。生存競争に勝った種であっても、すべてを奪いつくすことはない。だが、生命史のなかで新参者である人間という種はなお未熟で、過ちをおかしやすい・・・・。
 ベーコンが未完の寓話
(ぐうわ)をどのように終えようとしていたのか。今となってはわからないが、こう考えてはどうだろう。「君臨」から「共生」へと頭を切り替え、物語の続きを記していくのが21世紀だ、と。
 文明を低リスク型へと変えるため、歴史の歯車を大きく動かしたい。

'10.1.3.朝日新聞
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